2008年11月27日

医療崩壊の根本原因(2)

前回に引き続き、評論家・李啓充氏の講演のお話をご紹介致します。



医療崩壊の根本原因は医療費抑制(下)
日本も見習う?弱者切り捨ての米病院会社

(2008年11月21日 JanJanネット)
弱者を追い詰める民間保険天国の米国
 米国で民間医療保険の加入者は、総人口3億人のうちの約2億人にとどまる。市場原理なのでお年寄りやお金のない人は落ちこぼれる。彼らを救済しようとする公的医療保険として、メディケア(高齢者・障害者)とメディケイド(低所得者)がある。各約4,000万人で、ほかに無保険者4,500万人がいる。


 日米医療費比較
               米国     日本
GDPに占める医療費の割合15.8%   8.0%
一人当たり医療費     $5,952  $2,249
民間負担         $3,282  $1,482*
税負担          $2,670@  $767*
―――――――――――――――――――――――――
米保健省調べ、2003年
*は日本での公民負担割合からの計算値
@米国は連邦予算の25%を医療費に支出
(日本は10%、社会保障全体で26%)


 日米は同じ「小さな政府」だが、医療費を比較すると上のようになる。米国は1人当たりにかかる税負担が日本の3.5倍。それなのに、わが国では「公的負担は限界に達した」と言われる。国家予算からの支出は米国が25%なのに対し、日本は10%にすぎない

 米国で民間医療保険が高いのは(1)運営の効率が悪いことと(2)「サクランボ摘み」、つまり、いいとこ取りの弊害からである。

 (1)について、米国にメディカル・ロス(医療損失)という概念がある。徴収した保険料のうち、医療に使う支出の割合を示したもので、「民」の81に対して「公」は98となっている。営利の保険会社は85を超えると、ウォールストリートで「あの会社は経営が下手だ」と株価が下がる。今、日本では「公」を減らして「民」を増やすと言っている。

 (2)について、米国の保険会社は儲けを多くするため、病人を保険に入れない。自営業者の保険料が高く設定してあるのもそのためである。反対に大企業で働く人の保険料は安い。健康な人が多く、大口の顧客を獲得できるからである。そのため、公的保険に有病者が集中して加入者の負担が増すという悪循環に陥っている。

 テネシー州では入院日数を年間20日までとしたり、受診回数を10日までと制限を設けることが常態化している。ユタ州ではさらに、救急外来や専門医受診、入院医療を保険から外す動きが起きている。サービスカットされたこの新しいメディケイドは医療保険などと言えず、事実上の無保険者化である。そのことが民間保険への需要を高め、毎年2、3割も値上げすることにつながっている。社会に公の保険が1つだけなら、こうした悲劇は起こらない。

 わたしは昨年5月、米国の病院で患者として手術を受け、8日間入院した。病院から室料を含め5万229ドル、日本円でおよそ500万円の請求があった。医師たちからのおよそ5,100ドルと合わせおよそ5万5,000ドルだったが、保険に入っていたため約9,000ドルすなわち約90万円ですんだ。もし保険に入っていなかったら、この値引きは受けられない。しかも逆進性があり、貧しい人ほど高い。

 こうした欠陥ある医療制度は、借金地獄の温床になっている。無保険者が入院して多額の借金を残すと、一定期間後にプロによる債務の取り立てが始まる。患者の持ち家に抵当権を設定し、裁判所や弁護士の費用も債務に加算する。債務者は一度呼び出しを無視すれば、逮捕状を請求される。警察による肉体差し押さえだ。医療費負債による個人破産は原因の第2位に上昇している。名門イエール大学で過酷な取り立てが問題になった後、コネチカット州では医療費負債の利子を年5%に制限した。

混合診療は製薬会社の暴利とえせ医療のため

 日本では保険診療と自由診療の混合を認めていない。ある46歳の男性がくも膜下出血を起こし、緊急手術した。術後血管攣縮(れんしゅく)による死亡や後遺症の発生が心配されるが、ニモジピンという薬を使えば、発症率を3割から2割に抑えられる。この薬は日本では保険外で、混合診療の禁止により、使用する場合は全額自己負担となる。だから混合診療は一見患者に好都合に思われるかもしれない。不幸にも、薬が届く前に脳血管攣縮が始まった。実はこの患者はわたしの弟である。しかし、混合診療がけしからんという意見は変わらない。

 第1に、財力による差別を容認する。ニモジピン1カプセルに10万円の値が付けられれば、3週間の投与で2,560万円の負担。この額を払える人だけが恩恵を得られる。

 第2に、えせ医療が横行する危険がある。医療保険に含まれるのは、有効性・安全性が認められたもののみ。確認なしの医療が自由診療の市場で大手を振ると、いかがわしい医療が横行しかねない。

 第3に、医療保険本体がアビュース(乱用)される危険。美容形成手術が本来の目的で入院した患者が、肝障害などという保険病名を付けて入院費用を保険に払わせ、手術料だけ払うような悪用が生じかねない。

 第4に、保険医療が空洞化する危険性がある。製薬会社が新薬を出す場合、手間暇コストをかけて治験をしなくなる。需要の高い薬は高い値段を付け、自由診療で売ってしまえとなれば、時代遅れの効き目の悪い安い薬だけが保険診療といった事態になりかねない。

 中国は混合診療の先進地で、1980年代初めに医療に市場原理を導入した。患者は前金を要求され、払えなくなった時点で退院を強いられる。退院患者の4割は中途で去る。米国では1,000万円払わないと白血病の治療を受けられない。それにもかかわらず、規制改革・民間開放推進会議議長だった宮内義彦氏は、次のような発言をしている。

 「国民がもっとさまざまな医療を受けたければ、『健康保険はここまでですよ』、後は『自分でお払いください』というかたちです。金持ち優遇だと批判されますが、金持ちでなくとも、高度医療を受けたければ、家を売ってでも受けるという選択をする人もいるでしょう。」
(『週刊東洋経済』2002年1月26日号)

 混合診療導入の主張には、問題のすり替えがある。ニモジピンのようないい薬が使えないのは、混合診療を認めていないことが問題なのではなく、保険診療に含まれていないことが問題なのである。

 この薬は米国で89年に認可されたが、なぜ日本で認められないのか。販売権を持つ製薬会社に聞くと、認知症の人を対象に臨床した結果、はねられたという。年間1万5,000人しかいない、くも膜下出血の患者ではなく、何十万人という認知症の人に毎日飲んでもらうことを狙って認可申請した。製薬会社の欲深さのため、日本のくも膜下出血の患者が犠牲になっている。

ぼったくりバーと変わらない株式会社病院

 米国では、株式会社が巨大病院チェーンを経営する。医療を市場に委ねれば、日本で何が起こるかが分かる。米国第2の病院チェーン、テネット社の2002年の売り上げは1兆7,000億円に及ぶ。営利病院は、競争相手の病院を買収して閉鎖するなど、強引な手で市場の寡占化を図る。コストを抑えるための合理化を徹底し、ベテラン看護師の解雇や不採算部門の切り捨てを行う。患者への請求を高くし、診療報酬の不正請求を組織的に行う。大病院チェーンに例外はない。

 非営利病院との価格差は歴然としている。巨大営利病院は言い値で商売ができる。下の表はサンフランシスコ・ジェネラル・ホスピタルという非営利の病院と、テネット社が保有するモデスト・ドクターズ・メディカルという病院との医療行為の価格比較。営利病院がぼったくりバーと変わらないことが分かる。


 非営利と株式会社病院との商法比較

サ病院:サンフランシスコ・ジェネラル・ホスピタル(非営利)
モ病院:モデスト・ドクターズ・メディカル(テネット社)

        サ病院    モ病院
胸部X線   $120 / $1,519
血液像検査    $50 / $547
血清生化学検査  $97 / $1,733
頭部CT     $950 / $6,599


 2002年10月、ウォール・ストリート・ジャーナルにテネット社の診療報酬不正請求の記事が載った。FBIが強制捜査に入り、株価が大きく下がった。その直後、同社が所有するカリフォルニアの病院で必要のないバイパス手術をしていたことが明るみに出て、株価はピークの4分の1にまで暴落した。米巨大病院チェーンではこうした犯罪が頻発しており、事件によっては1,000億円を超える巨額の示談金を年末に支払うことが恒例化している。

 病院が株式会社化されると死亡率が上昇することが、全米3,645の病院を12年にわたり調査した結果から出ている。これによれば、非営利から株式会社に変更された病院では、平均死亡率0.266から0.387へと5割増えた。一方、株式会社から非営利に変わった病院では、死亡率は0.256から0.219へと下がっている。入院費用は株式会社化によって、8,379ドルから1万807ドルに約2割上昇。逆に、非営利に転換しても7,204ドルから7,486ドルへと、あまり変わらない。規制改革会議は「株式会社・経営のプロがやれば多彩な医療サービスが展開されて患者のためになる」と言ったが、正反対の結果が出ている。
 
憲法違反が疑われる民間保険導入

 米通商代表部が毎年作成する「日米規制改革及び競争政策イニシアチブ(『年次改革要望書』)」には、日本への改革要求項目が記されている。郵政民営化が決着した今、大きなターゲットになっているのが医療改革。混合診療の導入と株式会社の参入を求めている。

 米国の保険会社が日本で甘い汁を吸う構造はすでに出来上がっている。ある米国系保険会社は、米本国の2倍以上に当たる110億ドル、日本円で1兆1,000億円の収入を日本支社で得ている。「公の保険は欠陥が多く、民間の保険を買わないと不安」というイメージが刷り込まれた結果だ。

 高齢化と医療費の関係を1960年からのデータで国際比較すると、日本では寿命が伸びる割に節制が利いている。逆に米国は、長生きできずに医療費だけ伸びている。この制度を入れようとしている日本はこれから、お金のない人がバタバタ倒れたまま放置されるだろう。

 新自由主義派は「自助」「自律」「自己責任」という言葉を好む。「民」主体の米国型の保険制度は不平等・不公平であるだけでなく、社会全体の医療費負担も高くつく。一方、西欧・日本型は平等・公平であるだけでなく、社会全体の医療費負担も安く上がる。

 日本の医療は「タイタニック化」の危機に直面している。「民」の保険は1等の客は通すが、2等・3等の客を差別する。つまり、お金のある人の命は助けるが、ない人は助けない。日本が誇る「皆保険丸」を氷山にぶつける行為と変わらない。

 憲法25条は次のように定める。
 (1)すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 (2) 国は、すべての生活部門について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 差別的な「民」保険の導入は、憲法違反ではないか


■李啓充(り・けいじゅう)
 1980年京都大学医学部卒業。天理よろず相談所病院、京都大学大学院医学研究科を経て、90年よりマサチューセッツ総合病院で骨代謝研究に従事。ハーバード大学医学部助教授を経て、2002年より文筆業に専念。著書に『怪物と赤い靴下』(扶桑社)、『レッドソックス・ネーションへようこそ』(ぴあ)、『アメリカ医療の光と影―医療過誤防止からマネジドケアまで』『市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗』(以上、医学書院)など。訳書に『医者が心をひらくとき― A Piece of My Mind (上、下)』ロクサーヌ・K・ヤング(医学書院)など。

ちょっと前に、マイケル・ムーア監督作品の映画「シッコ」が上映されましたが、アメリカの医療制度の酷さは目に余るものがあります。本当に先進国なの?と目を疑ってしまうような格差医療、無保険者の多さ、医療保険制度の貧弱さ…先般の米大統領選挙で候補者達が口々に「国民皆保険制度の実現」を唱えていた背景の一つです。

「シッコ」でも少し触れられている話かもしれませんが、アメリカの対岸にある社会主義国家・キューバの医療制度が近年注目されてきています。とにかくキューバには医師が多い。地域には必ず「かかりつけ医」がいて(後期高齢者医療制度の「かかりつけ医」とは概念が違います)、国民誰もが気軽に医療を受けられる。

当然ですが、社会主義ですから医療費は無料医薬品も無料です。医師が定期的に自宅に巡回して診てくれます。国家的に医師を養成していて、海外の留学生も積極的に受け入れている。おかげで国民の平均寿命はアメリカ並みかそれ以上、乳幼児死亡率ではアメリカよりもキューバの方が低くなっている

アメリカでは医療崩壊が社会問題となっていて、あらゆるところで「国民皆保険」が叫ばれているのに、何故日本は逆行するようなことをわざわざやろうとするのか?要するに外資の医療保険会社や製薬会社が収益を上げる為に、アメリカ政府に年次改革要望書を出させて、わざわざ日本の法律を変えて下地作りをやっている。

あまり政治的なことを書くとアレなので今日はこのへんにしておきますが、久々に感銘を受けた話でした。社労士試験を受験される方、社労士として活躍されようと考えている方は、法律だけではなくて、社会保障制度そのものの考え方も学んでおくべきだと思います。

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2008年11月26日

医療崩壊の根本原因

昨今の医療制度について、辛辣かつ正論?な指摘をされている記事を見つけました。全2回に分けてご紹介したいと思います。



医療崩壊の根本原因は医療費抑制政策(上)
保険医協会講演会で李啓充氏が警鐘

(2008年11月20日 JanJanニュース)
(前半部分省略)

オーナー気取りの、のさばりが国を滅ぼす

 わたしは野球が大好きで、よく大リーグを見る。黒人初の大リーガーは、ジャッキー・ロビンソン(1919〜1972)という選手だった。新人王とMVPに輝いた名選手だが、差別反対運動に身を投じた。奨学金も設立し、優秀な若者をアフリカから呼んだ。

 バラク・オバマ次期大統領の父はケニアから来て白人女性と結婚したが、ロビンソンがいなければ今のオバマ氏はない。ロビンソンは37歳で引退すると、急に老け込んだ。糖尿病を患い、心筋梗塞(こうそく)で亡くなったが、このことは今日の話と密接にかかわる。
 
 なぜ日本の医療が崩壊へ向かっているのかを考えるとき、レッドソックスとヤンキースの関係が参考になる。つまり、(上位の)レッドソックスのオーナーは、金を出すが口は出さないのに対し、(下位の)ヤンキースのオーナーは金も口も出す。日本の医療崩壊の最大の原因は、オーナーを気取る人たちが、口だけ出しているからである。
 
 例えば2月、政府の社会保障国民会議の吉川洋座長(東京大大学院教授)が国民医療費について、今後の増加分は民間保険などで賄い、公的保険の適用対象を広げない意向を示した。吉川氏は経済財政諮問会議の民間議員も兼任する。経済財政諮問会議の議員は4人が民間人で、財界2人と財界と意見を同じくする経済学者2人からなる。これが国の政策の大本を決めてしまう。
 
 米国人にこうした仕組みを紹介すると驚く。民間セクターが国の公的な制度を決めるのかと。まさに、この国のオーナーを気取っている。彼らが「公」を減らし、「民」を増やせと言っている。さらに、赤字を抱える自治体病院を廃し、「株式会社による無駄のない医療」を、と訴える。目指しているものは、米国型の医療制度である。

国民負担率は企業負担抑えるための口実

 小さな政府を唱える人が好んで使う言葉に、国民負担率がある。これは社会保険料と租税の和が国民所得に占める割合を指す。日本36%、米国32%と4割を切るのに対し、スウェーデンは7割超。「7割も税金?」と思わせる指標である。国民負担率と称する“National Burden Rate”は、1982年の土光臨調で発明された日本だけの言葉である。1997年に財政構造改革法で5割を超えないことが目標に定められた。つまり、小さな政府が国是になり、その中で社会保障費も抑制された。しかし、国民負担率は負担の実態を反映していない。

 日米国民負担比較
(50歳、自営業、4人家族、2008年度納付額)
 課税収入700万円(1ドル=106円)として比較
        日本    米国(カッコ内は2005年の比較データ)
所得税    97万円  99万円
住民税(州税)70万円  37万円
国民年金   17万円 115万円
医療保険   62万円 242万円(152万円)
 総計   248万円 493万円(417万円)

→国民負担「率」を上げると、実際の国民負担は上がる。

 国民負担を日米で比較する(上表)。この条件で見た場合、米国では医療保険として242万円を支払わなくてはならない。これは民間保険で、毎年値上がりする。新たな保険に入ろうとしても、既往症が問題にされ、厳しい。国民負担率は同じだが、倍近く費用がかかる。公の部分だけは同じだが、民の部分があるからだ。これが日米の違い。オーナーを気取る人たちは「国民負担率は上げない」といっているが、上げるのと同義である。

 OECD各国の国民負担率と比較しても、日本はとても小さな政府。しかし、どの国も引かれても給料の8割ほど残る。だまされてはいけない。国民負担率の概念は、分担の不公平を隠し、社会保障水準を抑制する手段として用いられている。企業の公的負担を増やさないためである。企業の公的負担率はフランス14.0%に対し、日本は7.6%と半分近い。それなのに財界は「日本は法人税が高いから下げよ」と主張する。

 社会保険料の本人負担と事業主負担の割合を、たとえば日仏で比較して見る。本人負担は日本10.89%、フランス9.63%とほとんど同じだ。しかし、事業主負担が日本11.27%に対してフランスは31.97%と日本の3倍近くを払っている。フランスでは普通の人の負担割合が低く、大きな政府はこうして運営されている。

 この30年間の国民医療費を財源から見ると、「家計」部分が増え、「事業主」負担が減っている。日本の医療費はGDP比で見ると低いが、本人負担率は最も高い。オーナーを気取る人は国民負担を抑えないと経済成長が停滞すると言うが、政府の大小と成長するしないは無関係(グラフ1)。

小さな政府は健康被害も拡大する

 医療崩壊を考えるとき、こうした改革を続けていては解決するわけがない。OECD諸国の貧困度を見ると、国民負担率の低い、いわゆる「小さな政府」の国では所得再分配が進まず、健康被害が増えている。ジニ係数は1が究極の格差だが、米国では1980年代から上がった。レーガン政権が小さな政府を目指したことにより、高額所得者の減税などが行われた。英国では1990年代から急激に上昇。サッチャー政権が規制緩和路線を採ったからだが、今はやめている。日本は90年ころからの数字しかなく比較できないが、急激な速度で上昇しており、2020年くらいには米を追い越すと予測される。

 格差が拡大すると、公衆衛生上問題が起こる。日本では「生活習慣病」と呼ばれ、自己責任にされているが、ストレスで健康が損なわれるのは明らかだ。年収を6段階に分けて死亡率との関係を見た米国の調査では、一番お金のない層の死亡率は最もある層のおよそ3倍高かった。メタボより、お金がないことの方が害を及ぼすことが分かる。

 これは退職後も影響する。管理職から補助職まで職種を4段階に分類したところ、相対死亡率は40〜60歳の現役世代で4倍の差があった。70〜89歳でも2倍の差があり、格差の恐ろしさが分かる。

 人種差別にさらされることも、健康をむしばむ。母親の健康とを図る指標とされる新生児の体重について、米国生まれの黒人とアフリカ生まれの黒人を比較すると、米国生まれの方は平均体重が少ない。遺伝の違いでないことが分かる。ジャッキー・ロビンソン選手も、格差症候群の被害者だったのではあるまいか。黒人同胞の期待を一身に背負っただろうし、差別に遭っても怒ったり、反抗してはいけない立場にあり、ストレスも受けたはず。
 
 英国は階級制の強い社会だが、平均余命を社会階層別に見ると、1970年代から20年間、その違いが拡大してきた。新自由主義路線を取ってきた結果である。これは今後の日本で、正社員より派遣社員の余命が短くなる恐れがあることを示唆する。こうした事態を受け、英国では1997年から税制改革による所得再配分を実施している。最富裕層10%の可処分所得におよそ4%の増税をし、最貧困層10%におよそ11%の控除をするものである。

 わが国で消費税を上げなければならないというのはうそだ。消費税は逆進性が高く、低所得者ほど負担が重い。税収を増やすため、英国では勤労者控除を実施。オバマ氏の税制改革案はこの模倣である。英国では株式取引に0.5%を課税し、毎年約5兆円が入る。工夫すれば税収増の手段はある。

 ジニ係数の上昇は中曽根内閣の下、土光臨調が小さな政府を目指す答申を出したのが始まり。今、米国ではオバマ氏が出て「チェインジ」とやっているし、英国はやめた。日本はいつまで小さな政府がいいんだと言って格差を拡大するのか。2007年に英国レスター大学が行った国民「幸福度」調査では、デンマークが1位、ブータン8位なのに対し、世界で経済第2位の日本は88番目だ。

(続く)

ジニ係数、というちょっと聞きなれない言葉が出てきました。所得の格差を示す数値で、経済学部で勉強した経験者であれば聞いたことがある話なのですが…所得の格差と医療格差の相関関係を用いて、現在の日本の医療制度と、日本の政財界が目指そうとしている「アメリカの医療制度」に対して、痛烈な非難を浴びせています。

社労士試験では「日本の国民医療費は、GDP比で8%」なんて話を刷り込まれるように学習します。費用が少なくて高水準の医療を提供している(提供してきた結果、世界最高の平均寿命を獲得している)現在の日本の健康保険制度は、世界に冠たる優秀な制度だと自負しても良いのです。それを何故アメリカ型にするのか?保険会社や製薬会社を儲けさせるような仕組みにしようとするのか?

次回の記事に注目です。

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2008年10月24日

医師の自殺、過労死と認定

労災認定訴訟:自殺医師「過労」認める
賠償請求は棄却−−東京高裁

(2008年10月23日 毎日新聞)
 99年にうつ病になり自殺した小児科医、中原利郎さん(当時44歳)の遺族が「月8回の宿直など過剰勤務が原因」として、立正佼成会付属佼成病院(東京都中野区)を経営する立正佼成会に賠償を求めた訴訟で、東京高裁(鈴木健太裁判長)は22日、請求を退けた1審・東京地裁判決(07年3月)を支持し、遺族側の控訴を棄却した。

 1審は過重労働を否定したが、高裁は「業務が大きな負荷を与えた」として過重労働とうつ病の因果関係を認めた。ただ、病院側の責任については「精神障害を起こす恐れを具体的に予見できず、安全配慮義務を怠ったとは言えない」と判断した。

 今年、小児科医になった原告で長女の千葉智子さん(26)は記者会見で、「医師が守られない判決で残念。患者さんの命を守るには医師の心身の健康が必須だと実感している」と語った。川人博弁護団長は「判決はうつ病との因果関係を認めたのに、病院側の責任を否定した。今後、過重労働が拡大しかねない」と批判した。

 中原さんの自殺を巡っては、東京地裁の別の裁判で、労災と認めた判決が確定している。

これ、盛んにニュースでやってましたねぇ…。

過重労働とうつ病との因果関係は認めたけど、予見性がちょっと…という話ですよね。

過重労働をさせた場合の企業側の安全配慮義務(民法第715条)が認められるには、第一段階として「予見可能性」、第二段階として「結果回避可能性のある災害の防止措置不履行」と呼ばれる要件をクリアする必要があります。記事を読む限りでは、予見可能性の立証が甘かったのでしょうか?

しかし、小児科医であれば一般的に過酷な勤務であることは誰もが知るところ。「うつ病→自殺」を予見できないというのはちと変な気がします。

これは最高裁で徹底的に争ってもらうしかないのか?娘さんが小児科医としてスタートされている状況で、大病院相手の裁判を抱えるというのは、いろんな意味で酷であると思うのですが…。




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2008年10月22日

フリーターを正社員雇用すると助成金

正社員雇用に助成金=年長フリーター対策で−厚労省
(2008年10月21日 時事通信社)
 厚生労働省は21日、20代後半〜30代後半の「年長フリーター」を正社員として雇用した企業に、助成金を支給する方針を固めた。政府が月内にまとめる追加経済対策の一環。世界的な金融危機で国内景気が後退する中、予想される雇用情勢の一段の悪化に備えることにした。
 企業が保険料を負担する雇用保険事業として取り組む。予算規模は今後調整するが、助成額は雇用1人当たり50万〜100万円程度で、中小企業に手厚く給付する。3年程度の時限措置となる見込みだ。

これ、やらないよりはマシですが、もっと実効性のある対策を是非打って欲しい。一人50万円〜100万円ではまだまだ低すぎる気がしますね。

企業がフリーターを雇わない理由は様々ですが、1.定着性に懸念がある、2.正社員として得られるべきスキルが身についていない、3.年齢と経験とのバランスから、うまい処遇をすることができない、といった理由があるからです。

であれば、助成金と同時に、これらを解消する為の施策をもっと打ち出すべきでしょう。定着性懸念はニート支援塾で解消するにしても、スキル云々は職業訓練程度でどうこうできる話ではない。最悪、公務員として雇い入れて国が面倒を見るぐらいのことをしなくてはね。

ただ、フリーターといっても玉石混交。本当の怠け者もいれば、努力しても正社員になれずに年齢を重ねてしまった方もいます。そのあたりの線引きはしっかりとつける必要があるかと思います。


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2008年10月16日

離職票を直接発送

柿本石油解雇の従業員に雇用保険手続きで離職票を直接発送
(2008年10月9日 陸奥新報)
 柿本石油から解雇された従業員の雇用保険手続きをめぐり、青森労働局は8日、弘前市など青森公共職業安定所以外の職安管内については、離職票を本人に直接発送する方針を示した。
 経営破たん前から同社の雇用保険事務を受託している青森市内の社会保険労務士によると、雇用保険対象者は121人。
 内訳は青森職安管内52人、弘前25人、黒石5人、五所川原15人、八戸9人、むつ2人、野辺地4人、三沢3人、十和田(出張所)4人。ほか県外では仙台市と岩手県二戸市に各1人。
 解雇された従業員には雇用保険の受給などに必要な離職票が交付されておらず、同社会保険労務士が交付に向けた手続きを進めており、「数人を除いて8日までに終えた」としている。
 各職安は雇用保険手続きについて、従業員に文書を発送して周知する。青森職安管内は15日午前10時から、同職安で離職票を交付するとともに雇用保険の受給申請を受け付ける。他職安管内については本人に直接離職票を発送、各職安で相談を受け付ける方針だ

地方紙からの引用で恐縮ですが、これって実務上は珍しいケースではないですか?離職票というのは、フツーは所轄職安が直接離職者に発送するものではない。離職票は離職証明書の用紙の3枚目でして、発送するのは事業主(人事担当者)だからです。

退職手続を行う場合、まずは資格喪失届と離職証明書を所轄ハローワークに提出する。その時、資格喪失届は一部を切り離したものが雇用保険被保険者証となる。離職証明書はハローワーク提出用が1枚、事業主控が1枚で、あとは離職票として交付される。

となると、会社からは「雇用保険被保険者証」と「離職票」を離職者に郵送することになる。理由は、退職後に事後で提出をしなくてはならんから。事前に提出できれば離職者に直接手渡しできるけど、書類提出は退職日を過ぎるから、郵送でのやり取りになるのが一般的でしょう。

ニュースの記事だけでは何故離職票を発送できない状態なのかは分かりませんが、会社破綻の影響で喪失届等が全く提出できないような状態になっているのでしょう。たとえば社長が社判を持って逃げているとか?社判を持ち逃げされると手続関係は滞るので、たとえば労災の支給申請をやる場合はヒジョーに面倒になる。

にしても、こういった状況で手続を受任する社労士さんもタイトだと思いますよ。報酬は多分それほど貰えないでしょう。退職手続を沢山しなくちゃならないわ、大量離職届も出さなきゃならんわで大変だと思われ…。

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2008年10月14日

自宅持ち帰り残業で労災認定

家族申請58歳女性部長月50時間
(2008年10月8日 読売新聞 神奈川)
 藤沢市の保育施設運営会社の保育運営部長だった小林たづ子さん(当時58歳、鎌倉市在住)が昨年10月、くも膜下出血で死亡したのは、長時間労働による過労が原因だったとして、藤沢労働基準監督署が労災認定していたことが7日、わかった。自宅のパソコンでの作業記録などから月平均で約50時間の「持ち帰り残業」があったと認定した。

 遺族が7日、県庁で記者会見して明らかにした。労災認定は9月24日付。会見した夫の忍さん(62)によると、たづ子さんは保育士や公立の保育園長を経て、2006年1月に保育施設運営会社「サクセスアカデミー」に入社。亡くなる前の半年間は、翌年に控えていた計5か所の新設保育所の人材確保などの準備に追われ、昨年10月30日午前2時ごろ、自宅で仕事中に倒れ、そのまま帰らぬ人となった。

 家族は今年6月、労災認定を申請。たづ子さんは、各地の保育所に勤務する保育士の巡回指導を担当しており、ほとんど会社に寄れず、会社への報告書類や保育士向けのマニュアルなどの作成を自宅に持ち帰って作業していた。

 たづ子さんは、長年の保育所勤務で培われた専門知識が評価され、当初から管理職として入社しており、亡くなる1か月前に副部長から部長に昇進。忙しい時には午前3時、4時まで自宅で作業し、遠い仕事場に行く時などは、午前6時に家を出ていたという。

 忍さんによると、労基署は、亡くなる前の半年間は月平均で約50時間の「持ち帰り残業」があったと認定。この結果、過労死の基準を5時間上回る85時間の時間外労働を強いられていたとしている。

 忍さんは目に涙をためながら、「子供の命や発達を保証する会社が、そこで働く人たちを大事にしないと、子供たちを守れない。利益に追われず、足元を見つめ直して」と訴えた。

 同社の大前昭夫・人事担当取締役は「労災認定を真摯(しんし)に受け止め、持ち帰り残業の調査も含めて管理職・社員の労務管理を徹底したい」としている。

持ち帰り残業で労災が認められるというのは稀かと思いますが、決め手はパソコンの稼働時間だったようですね。労基署もタイムカードだけではなくパソコンの稼働時間を調べる時代であるように、持ち帰り残業もパソコンの稼働時間を調べて残業時間を推定するようですね。

これは結構興味深い論点なので、実務的に知っておくと事業主に対してもアドバイスできますし、社労士試験的にも役立ちます。労災は興味を持って調べておくと良いかと思いますよ。

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2008年10月13日

保険料の二重請求

全国健保協会が1025人分二重請求
(2008年10月10日 読売新聞)
 全国の中小企業の従業員らが加入する健康保険の運営を社会保険庁から引き継いだ公法人「全国健康保険協会」は9日、10月分の保険料を、5県の計1025人に二重請求していたと発表した。

 同協会は全員に電話で謝罪し、二重納付した人には返還手続きを行う。

 二重請求が発生したのは、岩手(49人)、宮城(626人)、長野(211人)、愛知(9人)、兵庫(130人)の5県。保険料を請求する際、9月までにあらかじめ10月分の保険料を納めていた人を除いていなかった。

 同協会は10月1日に設立され、社保庁の政府管掌健康保険(政管健保)を引き継いだ。

これってよくある…いや、ないない。あってはいけないことです。それにしても、納付済みのデータを事前に確認せずに請求していたんですかね。ひょっとして、システムに問題があるんじゃ…。

私も以前、金融機関に勤務していた時に、二重引き落としの悪夢に連日襲われたことがありました。旧住宅金融公庫の総合オンラインシステムを導入した際、自前のシステムとの連動がうまくいかずに、毎月のローンの返済を1月に2回、3回も引き落としてしまうというトラブルが連日発生。しかもいろんな金融機関で起こっていたらしい。

これって客の側にしてみれば焦りますよね。もちろん支店も焦ります。私なんか二重引き落とし問題解決の為に連日徹夜で泊り込んでシステム開発の人と打ち合わせしてテストしまくったことを、今でも鮮明に覚えています。

…まあ、これくらいに二重請求というのは厄介だし、システムの問題を解決するのも結構ホネだというわけ。でもローンの返済じゃなくて保険料なのだから、ホネだろうが何だろうがしっかりとしてくれなくちゃ。

全国健康保険協会になってから、電話で問い合わせをしたんですがなかなか繋がらない、なんてことが初日には起きていました。社会保険事務所に聞いてもたらい回しにされるし…あれ、どうにかならんかな。

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2008年09月10日

労災隠しは犯罪です!

「労災隠し」による送検件数が増加
(2008年9月3日 キャリアブレイン)
 「労災隠しは犯罪です」―。仕事中にけがをした従業員に健康保険による治療を指示し、所轄の労働基準監督署長に「労働者死傷病報告」を提出しないなど、いわゆる「労災隠し」で2007年中に検察庁に送検された件数は全国で140件と、前年から2件増えたことが厚生労働省のまとめで分かった。

 厚労省によると、1998年に79件あった「労災隠し」による送検件数は年々増加。2003年と04年の132件をピークに、05年には115件に減少したが、06年は138件に増加していた。

 厚労省は9月2日、「労災隠し」で送検された6つの事例を示し、労働災害の適正な届け出を求めている。今回、厚労省が挙げた6事例のうち5事例は工事現場での事故。「元請けの労災保険を使うと迷惑が掛かり、仕事がもらえなくなると思った」「受注を確保するために元請けに労災保険で迷惑を掛けたくない」などの供述が記載されている。

 厚労省の担当者は、「不動産不況などの経済情勢にかかわらず、下請け業者の意識の問題ではないか。建設業などでは、隠さなければいけない状況を上からつくられているところがあるので、元請けの保険を使うということを周知してもらい、労働者の権利を守ってほしい」と話している。

 労働安全衛生法第100条では、労働基準監督署長は事業者に「必要な事項を報告させ、または出頭を命ずることができる」と定めており、これに違反して「死傷病報告」を提出しなかった場合、50万円以下の罰金となる。送検になる事例は、所轄官庁が事業者に対し報告を求めるよう指導したにもかかわらず、あえて報告しないような悪質事例だという。

参照:労災隠しは犯罪です(厚生労働省HP)

労災隠しの問題ってヒジョーに難しい。何故難しいのかと言うと、法制度を作って実施している役人の立場と、工事現場の元請会社の立場と、現場で働く下請け会社の立場では、全くと言って良いほど意識が違うから。意識のギャップが労災隠しをかえって助長している。厚労省担当者の会話の内容からもそれは明らか。

労災隠しは不動産不況とは何の関係もありません(昔からあったことです)。下請け業者の意識の問題であることも正しいです。建設業では労災事故を隠さなければならない状況を元請会社から作られていることも事実です。

ただ、労災隠しの根本的な原因というのは、建設業という業種にはびこる徒弟制度的慣習、労災保険制度の問題、バブル崩壊以降慢性的に続いている建設業不況ではないかと思うのです。

建設業というのは、言葉は悪いのですが“荒くれ者”の世界です。仕事をくれてやる人間が「親方」で、施工をする下請けが「弟子」です。封建的な徒弟関係で結ばれている一種独特の世界なのです。原理的に、コンプライアンス云々以上に封建的な徒弟関係やら秩序の方が優先する世界なのです。

ですから、下請けの会社が元請の労災を使ってしまった場合、弟子が親方に逆らった、迷惑を掛けた、ということになってしまう。結果的に仁義を破ったことになり、次から仕事がもらえなくなるので、下請けはそれを恐れて労災を隠すのです。元請会社も、そのような業界の体質を、下請けイジメやら統制の手段に平気で使っている。

あと、労働保険徴収法では、いわゆる「有期事業一括」とか「元請一括」といった、建設現場を前提とした労災制度を構築しています。最初から元請けが労働保険料を負担することになっていて、しかも事故を起こすとメリット制で保険料がグンと跳ね上がる…制度としては合理的なんですが、逆に制度そのものが元請を追い詰める結果になっているような気がします。

建設業不況という点も見逃せないでしょう。今はどこの建設会社も下請け、孫請けいじめが横行していますから、末端の建設業者はまともにやってもなかなか食っていけない。うちの実家の建設会社も、最終的には不況で稼業を畳んだクチなのです。不況であれば労災事故云々で元請と揉めるよりは、今まで通り仕事を貰っていた方が良いという打算が働いてしまうのです。

本気で労災隠し対策をするなら、建設業業界の体質を変えるように、もっと政策的なインセンティブを働かせる必要があるような気がします。ただ、これは労務という分野だけでは到底解決できない問題だということは、十分に肝に銘じるべきです。


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2008年09月09日

雇用能力開発機構の解体?

雇用機構の解体で合意 有識者会議
(2008年9月4日 NIKKEI)
 政府の行政減量・効率化有識者会議(座長・茂木友三郎キッコーマン会長)は3日、厚生労働省所管の独立行政法人雇用・能力開発機構を解体する方針で合意した。巨額の赤字が問題視される職業体験施設「私のしごと館」(京都府)は、今月から2年間の民間への委託期間が終わるのを待たずに業務を廃止し、土地・建物の売却などを検討する方向で一致した。

 機構の中核である職業訓練も業務ごとに区分けし、廃止や民営化、地方移管などを進める方向を打ち出した。月内に有識者会議としての結論をまとめる。ただ厚労省と機構側は解体に反対しており、実現するかどうかは下旬に発足する新政権に委ねられる。

 茂木敏充行政改革担当相は3日、議論の素地となる論点整理を有識者会議に提示した。会合後、茂木座長は記者会見で「おおむね各委員とも方向性は共通している。全体の意見としては機構は解体だ」と語った。

雇用能力開発機構というのは、元々は「雇用福祉事業団」と言って、高度経済成長時代にエネルギー源が石炭から石油に切り替わっていった際に、炭鉱離職者の再就職を世話するという目的で発足された組織でした。だから雇用促進住宅とか、今の時代の感覚からすると「?」というような事業をやっていたのです。

社労士試験の論点としては、現在では雇用保険「ニ事業」ですが、ちょっと前までは雇用保険「三事業」でした。雇用安定事業と能力開発事業に加えて、「雇用福祉事業」というものがありました。雇用福祉事業の括りでされていたことが、たとえば雇用促進住宅の建設であったり、貸付事業だったり、いろんな施設の建設(中野サンプラザやら何やら)だったりしたわけです。

現在、炭鉱の離職者も殆どいませんから、雇用能力開発機構など不用…のように見えますが、どうもそのようには思えない。「私のしごと館」がけしからん、各種ハコモノ施設を作って赤字経営だから廃止、というのはやや暴論ではないかと思います。赤字を増やすだけの無駄な施設を売却するのは賛成ですが、本当に必要な事業だけ残す(例えば職業訓練とか助成金とか)という形にするのが最も望ましい。毎日新聞の9月5日付社説でも概ねそのように述べられています。

以前、旧住宅金融公庫の専任担当者だった経験も影響してか、採算に合わない事業は何でもかんでも一律廃止、民間でできることは民間に!という暴論には強い警戒感を覚えます。職業訓練等は、実施主体は民間に委ねても良いでしょうが、事業主体まで全部民間に任せて良いというものでもないでしょう。たとえ採算が合わずとも、いや採算が合わないからこそ、国民的なニーズとして公共的な使命を帯びてやらなければならない事業は沢山あるのです

「官から民へ」然り、郵政民営化然り、何らかの別の思惑で、不用な事業と必要な事業をごちゃ混ぜにして廃止、という暴論が未だまかり通っていることは、誠に残念でなりません。厚労省が雇用能力開発機構の廃止に難色を示すのは当然のことなのです。マスコミの扇動に騙されては、事の本質を見誤ることにもなりかねません。

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2008年09月08日

政管健保保険料率引き上げ?

政管健保 保険料率引き上げ(2008年9月4日 読売新聞)
来年度見通し8.3〜8.5% 高齢者拠出増で
 厚生労働省は3日、中小企業サラリーマンらが加入する政府管掌健康保険(政管健保)の2009年度の保険料率(医療分)について、現行の8・2%を0・1〜0・3ポイント引き上げ、8・3〜8・5%とする必要があるとの見通しを明らかにした。保険料率は2003年度から据え置かれたままだったが、医療給付費や高齢者医療への拠出金の増加が影響した。

 同省によると、政管健保の09年度の支出は、医療費や高齢者医療への拠出金などを含め、前年度比2・3%増の7兆5900億円となる見込み。これを賄うには、国庫補助(9700億円)などに加え、積立金にあたる「事業運営安定資金」1800億円をすべて取り崩しても、保険料収入として6兆3900億円が必要。

 保険料を確保するためには、従業員の給与水準が現状のままと仮定した場合、保険料率を8・3%にする必要があると試算。さらに、積立金に手を付けないケースでは引き上げ幅が拡大し、保険料率は8・5%になる。

 政管健保は10月に公法人「全国健康保険協会」が運営を引き継ぎ、これまでは全国一律だった保険料率を同協会が各都道府県ごとに設定するため、今回の数値は全国平均の見通しとなる。

 今春に始まった高齢者医療への財政支援を巡っては、大手企業の健康保険組合も負担増に苦しんでいる。「西濃運輸健保組合」が8月、前期高齢者への納付金により保険料率アップが避けられないとして、解散して政管健保に移行した。

 政府管掌健康保険 健康保険組合を持たないサラリーマンらが加入する健康保険。保険料は労使が折半する。社会保険庁が運営し、家族も含めた加入者数は、2007年度末で約3630万人。

ついに保険料引き上げですか。昨今の情勢が情勢だけに、引き下げには多分ならないでしょうね。これからは保険料も上がっていく一方だと思われます。高齢者医療への財政支援云々もそうですが、西濃健保組合の解散の話にもある通り、健保組合が解散して政管健保に加わることで費用負担が増えている、というのも背景にあるような気がしますね。

実務的に言うと、政管健保の手続は「比較的緩い」のですが、組合健保の方はなかなか厳しいのです。財政状態が悪い場合だと、なかなか家族を扶養に入れさせてもくれないし…たかが0.1%〜0.3%程度の保険料アップとは言っても、いろいろと影響が出てくることは必至ですぞ。


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